博士の愛した数式

博士の愛した数式
小川 洋子
書店のポップに「店員お薦めの感動作!!」とか書いてあってげんなり。普段なら手を出さない類の話なのに、買ってしまいました。だって初老の、世間知らずの数学博士が主人公で、しかも整数論! まるっきり萌えの記号のかたまりではないですか。
物語は、はじめに喪失が掲示される。控えめに、だが明確に。それはただの喪失ではなく、悲しみと、かすかな痛みを伴う幸せの記憶を表示している。
この、あらかじめ失われた記憶を追って物語は進む。博士と、博士の愛した数式たちと、博士の中にある静けさと混乱がひたすら淡々と語られる。その全てが美しく、そして悲しい。本当になんでもない一こまに涙が溢れる。
博士に萌えろ。