戦争の法 続き

なんでこの本が絶版になるのか理解に苦しむ。それくらい素晴らしい物語だ。新潮の罪は重いなあ。
第一章の地方における滑稽なパワーゲーム、第二章での愉快な珍道中、そして第三章で執拗に書き込まれる夢の終わり。これら全てが瑕疵も見付けられない程の見事な描写だ。人物を描き、風土を写し、物語を書いている。その仕事は丁寧で余分が無い。特に(変な言い方だが)日本特有の湿っぽい雰囲気が出ているのには正直驚いた。中欧趣味の彼女にそれは不可能だろうと想っていただけに。本当に、見事なまでに雰囲気を写し取る作家なのだ。
むー。佐藤亜紀が構想していたと言う「二・二六」物が俄然楽しみになってしまった。本当に描いてくれないかな。この際アポリネール*1風味でも構いませんぜ。

*1:猥談作家。嫌い