朝霧

朝霧 (創元推理文庫)

朝霧 (創元推理文庫)

日本文学を土台にした推理小説ということで、激しく読み手を選ぶ作家ではある。教養(らしきもの)を強く要請されるからだ。読書人の友人はそこが鼻につくと言う。
しかしだ、読書体験とはどこまでいっても個々人のものでしかありえない。それでも、本を読む人間なら「この思いを誰かと共有したい」と願ってしまう。そんなジレンマをこのひとはいつも気づかせてくれる。
嵌まれば存分に読書人の愉悦を味わうことができる。得がたい作品なのだがなぁ。