クラバート

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オトフリート=プロイスラー
中世ドイツにおける粉挽きギルド(水車小屋)の排他性、隠然たる地域への影響力、「親方」と徒弟たちの密議めいた関係性などが見事なまでに描かれている。プロイスラーはこれを書くのに11年の歳月をかけたというが、まさに労作といえるだろう。
ポーランドとの戦争が始まるまえのキナ臭い感じとかも秀逸だ。ザクセン選定候ってなぁに? ドイツって皇帝がいたの? とか現代日本人にはちょいとピントこない要素もある。このあたりは中欧の歴史を知らないと難しいか知らん。それくらい考証がしっかりしてる。現代ドイツ人にとっては基礎教養なのかなぁ。
アメリカとか現代日本のファンタジーだと、それは「どこにも無かった物語」になってしまうが、これは違う。しっかりと国や民族の歴史に根を張ったファンタジーだ。とても羨ましい。これがヨーロッパの強味だとまで感じてしまう。