海辺のカフカ

海辺のカフカ〈上〉
村上春樹
そうかー。村上春樹も60近いのかー。スタイリッシュなのにどこか朴訥な文は相変わらずですな。「わからない、そうかもしれない」と少年はつぶやき、マスターベーションをして混乱する。やれやれ。
雰囲気はかの傑作「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」に近いけど、残念ながらあの稠密な感触はない。「ねじまき鳥クロニクル」からの発展を感じるが、あの作品の素敵で滑稽な混乱は薄れている。
要するにあまり気に入らなかったのだが、不思議とけなすつもりにはならなんだ。それは、この作品が不思議な余蘊をたたえているからだ。なんというか、懐の深さなんぞを感じてしまったわけですよ。
関係ないですが、さすが大御所はいい紙を使わせてもらえるのだな、と感心しました。