シラノ・ド・ベルジュラック

シラノ・ド・ベルジュラック (岩波文庫)

シラノ・ド・ベルジュラック (岩波文庫)

戯曲三昧な日々。うほぉう。すごいなロスタン。みごとな詩劇だ。シェイクスピアの謹言、シラノの饒舌とならび称されるだけのことはある。華やかで刹那的で露悪的で、まあいわゆる浪漫だ。すべての場面に音楽的な躍動感がみちている。
主役、シラノの存在感がぴかいちだ。真実を戯言の奔流で糊塗しようとするシャイなあんちくしょうは、しかして自分を隠すだけの殉教者ではなくて、その中にも快楽を見出すしたたかさもあるナイスガイだ。いいなー、馬鹿な男の馬鹿な矜持。「……俺の羽根飾り(こころいき)だ」のセリフにはぐぐっとくるやね。
あと、ないしょだが、口絵のコンスタン・コクランがあまりに格好よくってくらくらきました。