the FUTURE is WILD

ドゥーガル・ディクソン, ジョン・アダムス あー、アメリカの特番の書籍化だったのか。いかにも御用聞きの学者先生が監修に付いてますってかんじの本でした。別に明白な間違いだらけってわけじゃないけど、なんつーかなー。 ある程度未来の地球環境のシミュ…

ウォーターシップダウンのうさぎたち

ASIN:4566021092 下巻読了。面白かった。 野性のうさぎの一年仔は、巣が飽和状態になると移住をするのだが、これはその様子を描いた物語だ。ただそれだけの話を「物語」にしてしまう作者の力業にほとほと感嘆した。 安住の地を目指すうさぎたちの姿は求道者…

ウォーターシップダウンのうさぎたち

ASIN:4566021084 リチャード・アダムズ 上巻を読了。うわ、すげえわこれ。電車の中で上巻を読み終えたとき、下巻が手元になくて途方にくれた。 土の湿った匂いと、血のしょっぱさと、身をすり合わせたときのすがりつきたくなるようなもの悲しい体温を感じさ…

リハビリ続き

「シルトの岸辺」「百年の孤独」「地球礁」と続けて読んだ。それで解ったのだが、似て非なるものを連読してはいけない。印象が引きずられてえらい難儀した。 どれも、ある時代に対するハイパーリアリスティックな素描だという点では共通してる。その対象がフ…

天文台日記 続き

石田五郎 身悶えするほど面白い。深夜の吉野屋でカレー丼を喰いつつわたわたしてしまう。元旦から始まった日記も早六月まできてしまった。読み終わるのが悲しい。復刊もむべなるかな。 いい本に会いました。

天文台日記

触りを読みはじめたばかりだけど、たまらない。ものすごく面白い。 題名の通り、天文学者の日常を淡々と綴った本だ。語られるのは充足した、確信に満ちた日々のノートである。こういう話を読むと身悶えしてしまう。 訥訥として味わいのある文章に酔う。こん…

ヒトは環境を壊す動物である

小田亮 じじ臭いと思いつつも一般書*1を買うのをやめられぬ。困ったものだ。ここには書いてないけどほとんど毎週買っている。 本書は動物行動学やら進化動物学、社会心理学の話を環境問題に絡めて解説した本だ。目新しい新説は無いが、それぞれの方面のトレ…

半落ち

横山秀夫 職場の方に借りました。前から読みたかったんですよ。 非常に精緻に書いてあるという印象。手法としては目新しいところはないけれど、安心して読めます。ミステリーとはこうあるべきだとは古いミステリーファンの繰り言ではありますが。 あちこちで…

THE BIG 3

ル・コルビュジエ、フランク・ロイド・ライト、ミース・ファン・デル・ローエら「近代建築の三悪人」の特集ムックを見掛けたので購入。気がつかなかったけど BRUTUS 編集だったのか。設計図も載ってないし物足りないけど、それじゃしかたない。 しかし、最近…

楽園の知恵 あるいはヒステリーの歴史

牧野修 ジャンルを知らないで読みはじめたのが却ってよかったですな。堪能しました。なかでも「踊るバビロン」が秀逸です。これに関しては声を大にして傑作だと太鼓判。 このかたはずいぶん読書傾向が似てるらしく、そここに貴志祐介、中島らも、米光一成、…

水晶内制度

笙野頼子 おおう、久しぶりに面白い小説ですよ。こーいう無闇に読者を引っ張り回して突き落す文体は大好きさ。無闇やたらに韜晦チックな素敵空間。自家中毒と神を見るヒステリーと薄っぺらい性愛感覚。あたしって終ってるのよそーなのよどうなのよ的な狂躁的…

麦ふみクーツェ

いしいしんじ 素晴らしい文章だ。美しくてもの悲しくて充足している。大人に読ませるなんてもったいない。「俺のあの子」に読ませたい。「僕の宝物なんだよ」といって手渡してあげたい。そんな本が人生でいくつあると思う? あの子がいくつになったら楽しん…

映画に毛が3本

黒田硫黄 何と言うか、他者の欲望経由でしか消費されない物語たちへの悲哀を感じてしまう。感想としてはメタですな。たぶん黒田硫黄を語るコンテキストがそーいうもんなんでしょう。本人も言ってるけど、彼のファンは「黒田硫黄が好きな俺が好き」って感じだ…

海辺のカフカ

村上春樹 そうかー。村上春樹も60近いのかー。スタイリッシュなのにどこか朴訥な文は相変わらずですな。「わからない、そうかもしれない」と少年はつぶやき、マスターベーションをして混乱する。やれやれ。 雰囲気はかの傑作「世界の終りとハードボイルド・…

黒い仏

殊能将之 わはははは。美濃牛に感心したので続けて読んだら、前回「やってないからえらい」と指摘したダメなことを全部やってやがる。 登場人物はなんだかキャラ萌え風味だし、いきなりな展開でストーリーは破綻するし、引用は訳わかんないし。 と、ぐったり…

美濃牛

殊能将之 うん、ハサミ男が結構良かったんですが、これも面白い。いまどきのミステリには珍しく破綻が無い。無論破綻が無いのは最低ラインなんだけど、むしろ珍しい部類になってしまっていますからね。 それよりも言葉のセンスが良いです。高値安定と言った…

戦争の法 続き

なんでこの本が絶版になるのか理解に苦しむ。それくらい素晴らしい物語だ。新潮の罪は重いなあ。 第一章の地方における滑稽なパワーゲーム、第二章での愉快な珍道中、そして第三章で執拗に書き込まれる夢の終わり。これら全てが瑕疵も見付けられない程の見事…

戦争の法

佐藤亜紀 復刊サイトに申し込んで置いたのがやっと手元に届いた。待ってたよう。嬉しいよう。そして最高だよう。 相変わらずの緻密で隙の無い文に酔いしれる。素敵だ。 続きはまたあとで

博士の愛した数式

小川 洋子 書店のポップに「店員お薦めの感動作!!」とか書いてあってげんなり。普段なら手を出さない類の話なのに、買ってしまいました。だって初老の、世間知らずの数学博士が主人公で、しかも整数論! まるっきり萌えの記号のかたまりではないですか。 …

BOOK DESIGN

DTPWORLD 別冊 本の装丁にフォーカスをあてたデザイン特集。ひとつひとつだと「あ、手の込んだ装丁だな」で終わってしまうところが、こうして集められるとなんというか奇妙な迫力を感じる。 特に、立ち読みでいいので柳澤健祐による「我輩は猫である」は是非…

前日島

ウンベルト・エーコ エーコ教授大暴れ! そらもー好き勝手絶頂にやりたい放題です。 あいかわらずのスラップスティックなジェットコースターストーリー。読者の襟首をむんずと捕まえてあちらこちらと振り回しながら、あさっての方向に向かって饒舌に叫び続け…

猫の地球儀

秋山瑞人作。 このひとは本当にすばらしい。物語があり余韻がある。なにより悲しい。電車のなかでは読めません。このストーリーテリングのうまさには本当に舌を巻く。ちゃんと笑わせて、盛りあげて、突き放す。絶妙だ。 何よりも素晴らしいのは物語が解体さ…

爆撃調査団

内田百輭 百鬼園先生の可愛らしさと言うのはすさまじいですな。本当にもう、脳殺ものです。きまじめで怒りっぽくて不精で小心で一生懸命に書いてる小説がつまらなくて頼まれて書くエッセイばかりが面白くてもう、最高。 なんかこう勝手に想像するに、この人…

クジラは食べていい!

ASIN:479661785X 小松正之 海洋資源と言う観点が面白かったです。論調はややもすると扇状的になりがちでしたが、邪魔になるほどじゃありませんし。主張も論証もしっかりしています。 しかしこの本の眼目はそこではありません。クジラに名を借りた国際政治上…

日本語は年速一キロで動く

井上史雄 ASIN:4061496727 書名がキャッチーなので敬遠していたのですが、地味な基礎研究に支えられた素晴らしい仕事でした。手法を吟味し、分類し解析する。その結果思ってもいなかった結論に辿り着く。その過程は刺激的で感動します。 言葉の変化は都市部…

イリヤの空、UFOの夏

ASIN:4840219443 秋山瑞人 これはすごい。ライトノベルと言うジャンルが激しく嫌いなので読み損ねるところだった。蕩尽される物語たちのなかに屹立する異能だ。すばらしい。 前半二巻のユーモアにくるまれた文章は、叙法表現*1が多いのにべったりしないドラ…

マクルーハン理論

エドマンドカーペンター 着想は豊富で、魅力的な視点・観点を提供して面白い。 でも結局それだけなんだよなー。次に繋がらないと言うか。なんだろうな、このもやもや感は。

カイエ・ソバージュII「熊から王へ」

中沢新一 熊好き、王好きには看過できませんでした。

悲しき熱帯

レヴィ=ストロース 学者の自伝以上に退屈な物がこの世にいくつあるか数えた所、五指を上回る事は無いと言う結論に達しました。